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日本古来の自然塗料を使ってみたい。

 ◆日本古来の自然塗料を使ってみたい。

 ◇時間、手間かけ美しく--塗りムラ気にせず

田原工務店が改修し、ベンガラと渋柿を塗った町家の中2階=京都市上京区で
田原工務店が改修し、ベンガラと渋柿を塗った町家の中2階=京都市上京区で

 日本古来の自然塗料を自宅に使いたいという人が増えている。化学合成樹脂の塗料によるシックハウス対策というだけでなく、時間と手間をかけるほどに色合いに深みが出てくるのも魅力だ。

 江戸時代から続く京都市上京区の「山中油店」(電話075・841・8537)を訪ねた。かつては明かり用の燃料や番傘の防水用の油を商った。今は食用油のほか、建築・工芸用の油、自然塗料を幅広く扱う。町家の格子や柱、壁の腰板に欠かせないベンガラ、柿渋のほか、木の表面用の油として、▽荏胡麻(えごま)▽桐▽亜麻仁(あまに)▽菜種--がある。

 店を切り盛りする浅原孝さん(50)は「自然塗料が見向きもされない時期もあったが、シックハウス問題が出て以来、全国から問い合わせが入るようになった」と話す。

 町家や古民家の改修・再生もブームになっているが、大工さんでも使い方を知らない人が多い。そこで、町家改修を手がける田原工務店(上京区)の田原利晃さん(48)と協力し、数年前から講習会も開くようになった。参加者の中には、自宅のちゃぶ台を持参して塗装する人も。「ベニヤ板に塗ってもそれなりの味わいが出る。家の中の木製品で十分、楽しめます」と浅原さん。

 自然塗料の扱いは素人でもそれほど難しくない。ベンガラ(茶色)と柿渋の基本的な使い方を習った。

 柿渋の原液1升(1・8リットル)に対し、ベンガラ250グラムの割合で溶かす。この量で20平方メートルは塗れる。柿渋は鉄に反応するためプラスチック容器を使用する=写真<1>▽はけで均等に塗る。ペンキと違い、さほど塗りムラは気にしなくてよい=同<2>▽ウエス(布)でふき取ると、木目が美しく浮き出る=同<3>▽乾いたら、ウエスで薄く荏胡麻油を塗る=同<4>。

ベンガラと渋柿の基本的な使い方。左から文中の(1)(2)(3)(4)
ベンガラと渋柿の基本的な使い方。左から文中の(1)(2)(3)(4)

 柿渋だけを塗る方法もある。この場合は、原液を水で2~3割薄めてはけで塗り、ムラや気泡をウエスでふき取る。3回くらい重ね塗りしても色が薄く感じられるが、数カ月たつと次第に濃くなる。いずれも木の材質で最終的な色合いは異なるので、初心者は別の木片で試すのが無難だ。

 忘れてはならないのは、自然塗装の本当の美しさは、後の手入れによって生まれるということ。浅原さんは「からぶきを繰り返すことで、重厚な色つやが出る。かつて日本の民家では、柱や家具をよくからぶきしたものですよね。何十年もかけて美しい家を作る気持ちで取り組んで」と話す。【村元展也、写真・北村隆夫】

     ◇

 3月15日午前10~11時半、山中油店で講習会を開く。1500円。定員20人。

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 ■+α

 ◇ドイツ製も多彩に

 ドイツは自然(系)塗料の先進国で、多数のメーカーがある。日本で流通している主要なメーカーは、オスモ社、リボス社、アウロ社、クライデツァイト社など。それぞれ主成分となる油の種類や製法が異なっている。

 ただ、アレルギーを持つ人は、自然塗料に含まれる天然成分でもアレルギー反応を引き起こす場合もあるので注意が必要だ。また、最近は、石油化学系の塗料も、揮発油の溶剤を使わない水性タイプが主流となり、環境や健康対応型の製品開発が進んでいる。

 複数のホームセンターや専門店で情報を入手し、用途に合うものを見つけよう。

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 ■主な自然塗料(山中油店での価格)

 ◇ベンガラ

 酸化鉄を主成分とする赤色の顔料。かつてインドのべンガル地方で産出したことからこの名がついた。防腐効果がある。茶色、黒色もある。(250グラム、840円)

 ◇柿渋

 渋柿をつぶして搾った汁を発酵させたもの。防腐、防虫効果がある。ぎんなんの実のような強いにおいがするが、やがて消える。(1.8リットル、2625円)

 ◇荏胡麻油

 シソ科の植物、エゴマの種から搾った油。江戸時代までは、食用、灯明用など広く使われたが、菜種油の普及で衰退。近年になって健康食品としても見直されている。(1.8リットル、4305円)

毎日新聞 2008年2月4日 東京朝刊